UNION TOKYOのホームにして、多くの名店がひしめくカレーのメッカ、渋谷区神宮前。そんな神宮前の街を舞台に、服と食との垣根を超えて展開するクロスオーバープロジェクト、UNION JINGUMAE CURRY CONNECTION。ここでは、本プロジェクトに参画するカレーショップ5店舗を深堀り。最後を飾るのは、オープン30年超の老舗店『CURRY BAR HENDRIX C』。
神宮前の主要動脈のひとつ、外苑西通り沿いに居を構えて30余年。今回このUNION JINGUMAE CURRY CONNECTIONに参加した5店舗の中では最古参の1993年オープンであり、今やいくつもの有名店がひしめき合う神宮前カレーカルチャーの先駆者、『HENDRIX CURRY BAR』。その名のとおり夜にはレストランバーとしても営業する、カレーマニアからも地域の酒飲みからも愛される老舗店舗である。
オーナーシェフとして腕を振るうのは、書籍『まるで魔法なスパイスカレー』を上梓した経験も持つ若林さん。同店ひと筋でテクニックを磨いてきた、界隈でも知られたスパイスマスターだ。 「昔から趣味レベルで料理は好きでしたが、特に料理人を志していたわけではなくて、単純に学生時代のバイトとして始めました。当初は、友達が働いていた『ぎっちょん』というお店にバイトで入れてもらい、普通に週2〜3回くらい勤務していた中で、オーナーが新しくお店を始めたんです。それがこの『HENDRIX CURRY BAR』。それからしばらくは、ふたつのお店を行ったり来たりしていたんですが、あっという間に卒業の時期になり、ここの店長を任されるようになりました。だけど当時はあんまり売上が良くなくて。カレーバーっていうコンセプトはありましたが、それほど手の込んだ料理も出してなかったですしね。で、なんでもやっていいから、とにかく売上を上げてくれと。そこから、カレーやスパイスにまつわることを勉強して、少しずつできることを増やしていきながら、徐々にいまのカタチになっていった感じです。だからどこかで修行をしたわけでもなくて、完全に自己流です」。
そんな自己流のカレー道を歩き始めた若林さんがまず参考にしたのは、個人的に好きだったという上野『デリー』や神保町『エチオピア』など、日本のスパイスカレーの先人たち。そういった名店たちの背中を追いながら、理想のカレーに近づくために日々研鑽を積む中で、少しずつカレー業界の人間とも関係を構築。彼らが持つスパイステクニックも吸収しながら、自身のカレー作りに反映していった。ちなみに写真は、定番メニューのひとつであるキーマ・マトンカレー。超粗挽きのマトンと粗挽きスパイスの食感が弾ける逸品だ。 その一方、そこで手にしたスパイステクニックはカレーだけにとどまらず、その他の料理にも波及していく。
「もちろん仕事として真剣に取り組んではいましたが、正直に言うと、当時はそこまでカレーに興味があったわけではないんです。だからいつかは独立して、居酒屋のような店を自分でやりたいと思っていました。そういった想いを抱きながらスパイスの知識もついてくると、例えばどこかの赤提灯とかで飲んでいても、このポテサラにあのスパイスを合わせたら面白いかも、とか考えるようになってくるんですよ。じゃあやってみようってことで色々と試していく内に、カレー以外の料理も増えていきました」。 そんな他メニューの一例として提供していただいた、しめサバのカルパッチョ、自家製ベーコンのスパイス肉じゃが、ラム肉と夏野菜炒め。いくつかの定番はあるものの、そのラインナップは流動的。季節や仕入れ、若林さん自身の気分などで決められていて、スパイスを使用していないメニューも提供している。気づけば、若林さんが自身のやりたい店として思い描いていた、居酒屋的な側面も実現していた。
その後若林さんは、元オーナーから店の権利を購入。『HENDRIX CURRY BAR』は名実ともに、若林さんの店となっている。ますますもって、信じるのは自身の感覚のみ。若林さんはそんな現在のメニューを、自分の分身のようだと語る。 「カレーもスパイスもやっていく内に面白さを理解していくし、味覚も成長していく。そうしてメニューを増やしてきてはいるんですが、それって結局、全部ボクの気分とか好みなんですよね。おつまみで言えば、お酒に合うことが第一。カレーで言えば、スパイスがダイレクトに感じられるような使い方だったり、あえて焦がして使ったり。いろんな香りや食感をバランスよくまとめて、単調にならないように心がけています。だけど、そこに明確な答えはありません。正直、うちのカレーをどんな風に形容していいのか、ボク自身もわかりませんからね。そういった中での指針として、ボクはいつも、このカレーが自分だとしたら、どんな方向性になるのが気持ちいいか、と考えています。辛いのか甘いのか、さっぱりしているのかオイリーなのか。色々な選択肢の中から、自分が美味しいと思える方、カッコいいと思える方を選んでいく。そういう意味でうちのメニューは、ボク自身を投影したものだと感じているし、そんな道を開いてくれたカレーには、本当に感謝しています」。
そんな『HENDRIX CURRY BAR』の今回のコラボレーション先として招聘したのは、目黒区五本木を拠点とするストリートアパレルブランド『bal』。 「デザイナーの江田さんとは、同じデザイン学校の出身だったり、通っている飲み屋が一緒だったり、数年前までうちのビルの上の階で展示会をやっていたり、色々と繋がりが多いんです。もちろんうちにもよく食べに来てくれるし。だから今回デザインを担当していただくお相手としては、これ以上の適任はないかな、と」。
神宮前に居を構えて30余年。誰よりも長くこの街の流れを見続けてきた若林さんは、その印象をこう語る。 「駅前の賑わいとは離れているから、忙しすぎなくて好きですね。だけど決して人が来ないわけではなくて、デザイン関係の方とかアパレル関係の方とか、音楽関係の方とか、何かしらのモノ作りをしている方々に多く来ていただいています。そういう人たちってやっぱり、挑戦的なことに寛容だし、面白いことに敏感じゃないですか。だからボクがやろうとしていることに反応していただけることも多くて、個人的にはとてもやりやすいし、助かっています。何か新しいことを提案するには、とてもいい場所なんじゃないですかね」。
SHOP DATA
HENDRIX CURRY BAR
渋谷区神宮前2-13-2
@hendrix93_official
PRICE
¥8,800
RELEASE
2024/08/28
DESIGNED BY
bal
目黒区五本木3-17-7 D.S
@baloriginal_official
@balflagshipstore
baloriginal.com
UNION TOKYOのホームにして、多くの名店がひしめくカレーのメッカ、渋谷区神宮前。そんな神宮前の街を舞台に、服と食との垣根を超えて展開するクロスオーバープロジェクト、UNION JINGUMAE CURRY CONNECTION。ここでは、本プロジェクトに参画するカレーショップ5店舗を深堀り。最後を飾るのは、オープン30年超の老舗店『CURRY BAR HENDRIX』。
神宮前の主要動脈のひとつ、外苑西通り沿いに居を構えて30余年。今回このUNION JINGUMAE CURRY CONNECTIONに参加した5店舗の中では最古参の1993年オープンであり、今やいくつもの有名店がひしめき合う神宮前カレーカルチャーの先駆者、『HENDRIX CURRY BAR』。その名のとおり夜にはレストランバーとしても営業する、カレーマニアからも地域の酒飲みからも愛される老舗店舗である。
オーナーシェフとして腕を振るうのは、書籍『まるで魔法なスパイスカレー』を上梓した経験も持つ若林さん。同店ひと筋でテクニックを磨いてきた、界隈でも知られたスパイスマスターだ。 「昔から趣味レベルで料理は好きでしたが、特に料理人を志していたわけではなくて、単純に学生時代のバイトとして始めました。当初は、友達が働いていた『ぎっちょん』というお店にバイトで入れてもらい、普通に週2〜3回くらい勤務していた中で、オーナーが新しくお店を始めたんです。それがこの『HENDRIX CURRY BAR』。それからしばらくは、ふたつのお店を行ったり来たりしていたんですが、あっという間に卒業の時期になり、ここの店長を任されるようになりました。だけど当時はあんまり売上が良くなくて。カレーバーっていうコンセプトはありましたが、それほど手の込んだ料理も出してなかったですしね。で、なんでもやっていいから、とにかく売上を上げてくれと。そこから、カレーやスパイスにまつわることを勉強して、少しずつできることを増やしていきながら、徐々にいまのカタチになっていった感じです。だからどこかで修行をしたわけでもなくて、完全に自己流です」。
そんな自己流のカレー道を歩き始めた若林さんがまず参考にしたのは、個人的に好きだったという上野『デリー』や神保町『エチオピア』など、日本のスパイスカレーの先人たち。そういった名店たちの背中を追いながら、理想のカレーに近づくために日々研鑽を積む中で、少しずつカレー業界の人間とも関係を構築。彼らが持つスパイステクニックも吸収しながら、自身のカレー作りに反映していった。ちなみに写真は、定番メニューのひとつであるキーマ・マトンカレー。超粗挽きのマトンと粗挽きスパイスの食感が弾ける逸品だ。 その一方、そこで手にしたスパイステクニックはカレーだけにとどまらず、その他の料理にも波及していく。
「もちろん仕事として真剣に取り組んではいましたが、正直に言うと、当時はそこまでカレーに興味があったわけではないんです。だからいつかは独立して、居酒屋のような店を自分でやりたいと思っていました。そういった想いを抱きながらスパイスの知識もついてくると、例えばどこかの赤提灯とかで飲んでいても、このポテサラにあのスパイスを合わせたら面白いかも、とか考えるようになってくるんですよ。じゃあやってみようってことで色々と試していく内に、カレー以外の料理も増えていきました」。 そんな他メニューの一例として提供していただいた、しめサバのカルパッチョ、自家製ベーコンのスパイス肉じゃが、ラム肉と夏野菜炒め。いくつかの定番はあるものの、そのラインナップは流動的。季節や仕入れ、若林さん自身の気分などで決められていて、スパイスを使用していないメニューも提供している。気づけば、若林さんが自身のやりたい店として思い描いていた、居酒屋的な側面も実現していた。
その後若林さんは、元オーナーから店の権利を購入。『HENDRIX CURRY BAR』は名実ともに、若林さんの店となっている。ますますもって、信じるのは自身の感覚のみ。若林さんはそんな現在のメニューを、自分の分身のようだと語る。 「カレーもスパイスもやっていく内に面白さを理解していくし、味覚も成長していく。そうしてメニューを増やしてきてはいるんですが、それって結局、全部ボクの気分とか好みなんですよね。おつまみで言えば、お酒に合うことが第一。カレーで言えば、スパイスがダイレクトに感じられるような使い方だったり、あえて焦がして使ったり。いろんな香りや食感をバランスよくまとめて、単調にならないように心がけています。だけど、そこに明確な答えはありません。正直、うちのカレーをどんな風に形容していいのか、ボク自身もわかりませんからね。そういった中での指針として、ボクはいつも、このカレーが自分だとしたら、どんな方向性になるのが気持ちいいか、と考えています。辛いのか甘いのか、さっぱりしているのかオイリーなのか。色々な選択肢の中から、自分が美味しいと思える方、カッコいいと思える方を選んでいく。そういう意味でうちのメニューは、ボク自身を投影したものだと感じているし、そんな道を開いてくれたカレーには、本当に感謝しています」。
そんな『HENDRIX CURRY BAR』の今回のコラボレーション先として招聘したのは、目黒区五本木を拠点とするストリートアパレルブランド『bal』。 「デザイナーの江田さんとは、同じデザイン学校の出身だったり、通っている飲み屋が一緒だったり、数年前までうちのビルの上の階で展示会をやっていたり、色々と繋がりが多いんです。もちろんうちにもよく食べに来てくれるし。だから今回デザインを担当していただくお相手としては、これ以上の適任はないかな、と」。
神宮前に居を構えて30余年。誰よりも長くこの街の流れを見続けてきた若林さんは、その印象をこう語る。 「駅前の賑わいとは離れているから、忙しすぎなくて好きですね。だけど決して人が来ないわけではなくて、デザイン関係の方とかアパレル関係の方とか、音楽関係の方とか、何かしらのモノ作りをしている方々に多く来ていただいています。そういう人たちってやっぱり、挑戦的なことに寛容だし、面白いことに敏感じゃないですか。だからボクがやろうとしていることに反応していただけることも多くて、個人的にはとてもやりやすいし、助かっています。何か新しいことを提案するには、とてもいい場所なんじゃないですかね」。
SHOP DATA
HENDRIX CURRY BAR
渋谷区神宮前2-13-2
@hendrix93_official
PRICE
¥8,800
RELEASE
2024/08/28
DESIGNED BY
bal
目黒区五本木3-17-7 D.S
@baloriginal_official
@balflagshipstore
baloriginal.com