KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK - TERRACE MARTIN

UNIONを構成する様々な要素、その中でも音楽にフォーカスして、この場所から拡がるカルチャーを捉え紹介していく連載「KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK」。今回はUNIONの本拠、LAのジャズ / HIPHOPシーン最前線を語る上で欠かすことのできないプロデューサー / マルチ・プレイヤー / シンガーにして、ケンドリック・ラマーの成功を後押しした重要人物、テラス・マーティンを紹介。間も無くスタートする日本ツアーもお見逃しなく。



今年の夏は暑かった。日中はおろか、ナイトクラビングへと向かう夜の街さえ、缶ビール片手に歩けばものの数分で汗だくになるほどに。それでも音楽は至るところで鳴らされ、愛好家たちはスピーカーの前を目指した。エアコンの恩恵も受けられないほどパンパンになった屋内のベニューから、白昼夢と熱中症の合わせ技で意識が朦朧とする野外フェスまで。音楽によって、この暑さを忘れることはできなかったが、無理矢理にでも受け入れることはできた。ハイライトをひとつ挙げるなら、それはサマーソニックの現場だった。なかでもやはりケンドリック・ラマーだろう。ニュージーンズはひとまず置いておいて。

この日本で、あの規模で、現在進行形のラップミュージックを届けることのできる存在は、いまのところ彼しかいない。それはとても残念なことだが、それでもあのステージから、研ぎ澄まされたラップと低音の効いたグルーヴが放たれたことは、とても意味のあることだったと思う。2018年にヘッドライナーを務めたフジロックの時よりも、オーディエンスが彼のリリックを理解して反応していたという声もネット上で見かけた。

あの日、ケンドリックのパフォーマンスにヤラれたという人は、その感動を彼のラップスキルやカリスマ性だけで片付けずに、ぜひサウンドにも興味の矛先を向けてみてほしい。そこではテラス・マーティンというミュージシャンが大きな役割を担っている。2015年に発売された『To Pimp a Butterfly』でプロデューサーを務めたテラスは、盟友カマシ・ワシントンをはじめとするLAジャズシーンの才能を次々とアルバム制作に召集し、歴史的名盤の核となるサウンドを作り上げた。同作に収録された「Alright」や「King Kunta」は先日のサマーソニックでも披露されていたから、あの豊かで強烈なグルーヴを覚えている人も多いのではないだろうか。

そんなテラス・マーティンが9月11日から、横浜、大阪、そして東京のビルボードライブを舞台に日本ツアーをスタートさせる。ロバート・グラスパー、カマシ・ワシントンとの共同プロジェクト「DINNER PARTY」でこの春に行った来日公演も記憶に新しいが、本人名義は実に6年ぶり。パット・ビアンキ(オルガン)とトレバー・ローレンス(ドラム)を率いた3人編成でのライブが予定されている。

セットリストの中心になるであろう、今年6月にリリースされた最新作『Fine Tune』を聴き倒しておくことは言うまでもなく、もう一枚、聴いておくべきアルバムがある。それはテラスのデビュー作にして傑作と呼び声の高い『3ChordFold』に他ならない。リリースされた2013年から今年でちょうど10年。9月20日には記念のアナログ盤リリースも控えているだけに、同作からの演奏も期待せずにはいられない。「Angel」や、ウィズ・カリファとブレビを客演に迎えた「Motivation」、ロバート・グラスパーとの「No Wrong No Right」、それにケンドリック・ラマーを迎えた「Triangle Ship」。

テラス・マーティンによるビルボードライブのステージが、果たしてこの夏のハイライトを更新するのか。ベニューからの帰り道、夜風にあたりながら心地よく歩くあなたの姿を想像してみよう。



UNIONを構成する様々な要素、その中でも音楽にフォーカスして、この場所から拡がるカルチャーを捉え紹介していく連載「KNOW THE LEDGE / MUSIC BREAK」。今回はUNIONの本拠、LAのジャズ / HIPHOPシーン最前線を語る上で欠かすことのできないプロデューサー / マルチ・プレイヤー / シンガーにして、ケンドリック・ラマーの成功を後押しした重要人物、テラス・マーティンを紹介。間も無くスタートする日本ツアーもお見逃しなく。



今年の夏は暑かった。日中はおろか、ナイトクラビングへと向かう夜の街さえ、缶ビール片手に歩けばものの数分で汗だくになるほどに。それでも音楽は至るところで鳴らされ、愛好家たちはスピーカーの前を目指した。エアコンの恩恵も受けられないほどパンパンになった屋内のベニューから、白昼夢と熱中症の合わせ技で意識が朦朧とする野外フェスまで。音楽によって、この暑さを忘れることはできなかったが、無理矢理にでも受け入れることはできた。ハイライトをひとつ挙げるなら、それはサマーソニックの現場だった。なかでもやはりケンドリック・ラマーだろう。ニュージーンズはひとまず置いておいて。

この日本で、あの規模で、現在進行形のラップミュージックを届けることのできる存在は、いまのところ彼しかいない。それはとても残念なことだが、それでもあのステージから、研ぎ澄まされたラップと低音の効いたグルーヴが放たれたことは、とても意味のあることだったと思う。2018年にヘッドライナーを務めたフジロックの時よりも、オーディエンスが彼のリリックを理解して反応していたという声もネット上で見かけた。

あの日、ケンドリックのパフォーマンスにヤラれたという人は、その感動を彼のラップスキルやカリスマ性だけで片付けずに、ぜひサウンドにも興味の矛先を向けてみてほしい。そこではテラス・マーティンというミュージシャンが大きな役割を担っている。2015年に発売された『To Pimp a Butterfly』でプロデューサーを務めたテラスは、盟友カマシ・ワシントンをはじめとするLAジャズシーンの才能を次々とアルバム制作に召集し、歴史的名盤の核となるサウンドを作り上げた。同作に収録された「Alright」や「King Kunta」は先日のサマーソニックでも披露されていたから、あの豊かで強烈なグルーヴを覚えている人も多いのではないだろうか。

そんなテラス・マーティンが9月11日から、横浜、大阪、そして東京のビルボードライブを舞台に日本ツアーをスタートさせる。ロバート・グラスパー、カマシ・ワシントンとの共同プロジェクト「DINNER PARTY」でこの春に行った来日公演も記憶に新しいが、本人名義は実に6年ぶり。パット・ビアンキ(オルガン)とトレバー・ローレンス(ドラム)を率いた3人編成でのライブが予定されている。

セットリストの中心になるであろう、今年6月にリリースされた最新作『Fine Tune』を聴き倒しておくことは言うまでもなく、もう一枚、聴いておくべきアルバムがある。それはテラスのデビュー作にして傑作と呼び声の高い『3ChordFold』に他ならない。リリースされた2013年から今年でちょうど10年。9月20日には記念のアナログ盤リリースも控えているだけに、同作からの演奏も期待せずにはいられない。「Angel」や、ウィズ・カリファとブレビを客演に迎えた「Motivation」、ロバート・グラスパーとの「No Wrong No Right」、それにケンドリック・ラマーを迎えた「Triangle Ship」。

テラス・マーティンによるビルボードライブのステージが、果たしてこの夏のハイライトを更新するのか。ベニューからの帰り道、夜風にあたりながら心地よく歩くあなたの姿を想像してみよう。






TEXT:YOHSUKE WATANABE (IN FOCUS)

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