INTRODUCING : KAKUSEN-EN

INTRODUCING : KAKUSEN-EN

鶴仙園(かくせんえん)、今や日本でサボテンを育てているならば、知らない人はいないだろう。一般層からコア層まで、幅広く満足させるサボテン・多肉植物の専門店として、一線を画す存在となっている。鶴仙園 西武池袋屋上店は、連日多くの人で賑わい、本店である駒込店は、現在予約制での来店となっている。

昭和5年(1930年)に初代 靍岡銀之助氏によって創業され、以降4代にわたる歴史をもつ。現在は、3代目 秀明氏を代表として、2代目 貞男氏が支え、そして4代目となる十夢氏が業界の新たな可能性を模索している。秀明氏は、日本国内において、多肉植物・サボテンの魅力を伝えるべくさまざまな普及/啓蒙活動にも力を注いでいる。異業種との協業や販売会にも積極的に参加し、多方面で業界のハブ的存在としても活動している。

UNION TOKYO x CACTUS STOREのスペシャルコラボにあたり、PLANTS SUPPORT by KAKUSEN-ENという形でご協力いただいた。会期中は、UNION x CACTUS STOREのテラコッタポットに植え付けた植物の販売が行われる。会期初日の2日間、21(土)、22(日)には、植木鉢単体との植え合わせも楽しめるよう、選び抜かれたプラ鉢苗の販売も行われる。今回、CACTUS STORE AT UNION TOKYOの全体のキュレーションを務め、鶴仙園とも旧知の仲であるTHE SUCCULENTIST®︎の河野忠賢が、そのヒストリーと今後について、インタビューする。





「鶴仙園のルーツ」

河野 忠賢(以下、K): 貞男さん(以下、S)、秀明さん(以下、H)、十夢さん(以下、T)の3代に集まっていただきました。改めて、今日は色々聞かせていただきます。まず、"鶴仙園"という屋号は、靍(鶴)岡による、サボテン("仙"人掌)のナーセリー(園)ということで間違いないですよね。

秀明(以下、H ): そうです。初代は、今の僕の爺様。

貞男(以下、S ): つまり、俺の親父だね、銀之助。

K : 今の3代もキャラクターが、それぞれみんな違っていますが、初代の銀之助さんは、一体どんな人だったのでしょうか。

S : うちの親父は元々紙問屋の息子で、ある時、夜店で売ってたサボテンを買ってきて、そこから始めたって聞いたね。足立区に土地を持っていたから、そこに温室を最初に建てたそうだ。1930年、昭和5年に鶴仙園を創業した。

K : 今日は、昭和11年発行の鶴仙園のカタログを持って来ました。

S : そう!この感じ、古いねえ。今みたいな絵のロゴはなくて、<鶴仙園>の字だった。懐かしいよ。



K : 銀之助さんから貞男さん、秀明さん、そして十夢さんへと、今や4代続くことになっているわけですが、貞男さんは、どうやってこの家業に進んだのでしょう。

S : そうだなあ。まあ、子供の頃から植え替えやら、なんやら手伝わされてて、やりたいこともなかったから、自然と、この道に進んだね。そのころ、日本に大きなサボテンブームがあって、今みたいに百貨店で催事をするのが流行ってた。それで、ある時に池袋で催事があるからって、声をかけられたんだよ。それが、"西天"、西武の屋上だったんだね。その時実は、もう一件サボテン屋が呼ばれてたんだよ。それで負けねえって、いうんで頑張って売ったよね。銀之助も俺も、負けず嫌いだし。でもそのおかげでさ、その後常設で出さないかということになった時、売上げの一番だったうちを選んでくれたんだ。それから、50年近く、今もたくさんのお客さんに足を運んでいただいています。あの時気張ってなかったら、今はないよね。



H : 西武の屋上には、馴染みの方だけではなくて、百貨店を楽しんだ流れでたまたまのお客さんもきて下さるので、とてもありがたい場所です。

K : 今では、西武は、鶴仙園の代名詞ですよね。貞男さんが、今の鶴仙園の基礎を築いたわけですね。2代続きいよいよ家業となったサボテン屋、続く秀明さんは、どのように3代目になったんでしょう。

H : うーん、これが、実は親父と似たような感じです。大学を出て、本格的にこの商売を始めたのは2000年代の初めでしょうか。そのころは、多肉植物・サボテン自体が下火の時代で、それでも、ハオルチアブームのようなものがあって。自分は、ハオルチアでは負けたくない、という気持ちでやっていました。業界の先輩方たちにも支えてもらって、今に至ります。子供の頃から、手伝ったりもしていたし、たまに業者のセリになんかについて行ったら、もう、3代目だって勝手に紹介されてるし笑 そうやっているうちに、大学も卒業して、この家業にフェードインしてった感じですね。親父が腰を悪くしたタイミングも、ありました。



K : 貞男さんは、サボテンブーム、秀明さんはハオルチアブーム、それぞれが業界の浮き沈みを経験してきてましたよね。それでも続けてきた。

S : そうだよ。昔は、カクタスこそ王道。多肉は、"草もの"なんてちょっと下に見られてた。まあ、そんなのは昔の話だ。長くやってれば、浮き沈みはあるよ。

H : 親父と違うものを扱いたいっていう気持ちもありましたよ。

K : 今のロゴは、秀明さんの代に西天が改装になるタイミングで、作られたとお聞きしました。あれは、ハオルチアですよね?

H : あれは、ハオルチアのクーペリー(オブツーサ)を上から見たところをモチーフにしているんです。昔、うちで働いていた若いデザイナーに作ってもらいました。

K : 亀甲竜にも見えますね。"God"(西武池袋屋上店に置かれた、亀甲竜の有名な木)だと思っている人もいるかもしれませんね。

H : そうなんです。よく、そう誤解されるのですが、あれは間違いなくハオルチアです。



K : トムさんも、今や4代目として家業に入られた。そもそも家業が”サボテン屋”って、かなりレアケースだと思うのですが。学校には多分一人もいなかったでしょう笑

T : いないですよ笑

K : トムさんは、大学時代にNEIGHBORHOOD®︎でアルバイトしていたぐらい、アパレルの世界が好きなんですよね。

T : そうです。短い期間でしたけど、ご縁をいただいて。その頃の人たちとは、今でも仲良くさせてもらっています。僕は、実は一度外に出たくて、大学を出てから一度アパレルの会社に就職しました。それから、コロナ禍の中で色々な変化があって、家業を継ぐことに決めました。

H : トムには、ここまできたら、4代目ついで欲しいって気持ちは、正直ありました。

K : 素晴らしいですね。






CACTUS STORE AT UNION TOKYOの開催にあたり、製作されたCS特製のテラコッタポット(植木鉢)は、UNIONフロントマンとCSバタフライロゴを、A/B面に刻印した、ダブルロゴのデザインとなっている。サイズ展開は、4inch、6inch、8inch、10inchの4種類、全部で6型の展開となる。







K : 今回のCACTUS STORE AT UNION TOKYO自体が、象徴的なものですが、多肉植物・サボテンは、狭い業界だけでなく、アパレルの分野にも浸透して、一つのカルチャーとしてより広い層に浸透したと言っても間違いないでしょう。鶴仙園は、その渦中で、さまざまな経験をしてきたと思うのですが、どのような変化を感じてきましたか?

H : 昔は、サボテン業界というのはある程度決まったお得意様がいるだけの狭い世界でした。サボテン屋で、食っていけるの?と言われることもありました。最近は、この商売をやっていて、面白いというかありがたいのは、人の繋がりが増えたことですね。たくさんのポップアップイベントに参加する機会をいただいていますが、そうしたアパレルブランドの方々も、元々はお客様の一人だったことがきっかけということがほとんどなんです。






K : サボテン達が繋いでくれたご縁ということですね。

H : 今回のCACTUS STORE AT UNION TOKYOにもPlants Supportという形でお声かけいただいて、大変楽しみにしていました。メインビジュアルからして、これまでとは違う風が感じられます。世界感まで含めてこれまでの日本で行われたイベントとは別物というか、一線を画した印象があります。日本では、やはり"黒"色の植木鉢が中心でしたし、今もそうです。そこに、今回製作されたのはテラコッタポット。”テラコッタ”っていうとなんか格好良いですけど、つまりは"素焼き鉢"ですよね。素焼き鉢は、日本では古臭い安物の鉢というか、野暮な感じのものだとさえ思われていたものです。それが、一周回って、新しいものに見えてきた気がします。それに、アメリカLAのテラコッタは、色味もいいし、植物も映える。自分達でも、植え込んでいて楽しめました。

K : そうして業界自体に大きな変化があったということですが、長く続けていく上で、変わらないものはありますか。

H : サボテン・多肉植物の専門店としての矜持があります。これは、家業として長く続く中で培われた意識でもあると思います。何よりも、植物を大事に扱うこと。お買い上げいただいた後でも、健康に育つよう、時にはキッパリ、あなたの環境ではそれは作れませんとお伝えします。西武の従業員たちにも、そうした接客に努めるよう口を酸っぱく言っています。健康な植物は、美しいですから。TVや雑誌の媒体に出演して、講師を務める機会もいただいていますが、やはり大事にしているのはそこですね。売っておしまい、の商売では、決してやっていくことはできません。



S : 昔は、あんたには売らない、売れない、っていうこともあったね。部屋で作るつもりなら、売らないよって俺なんか言ってたよ。育つわけないんだから。植物が可哀想だよ。

H : 今では、植物育成ライトが進歩して、実際太陽の当たらない屋内でも多肉植物を栽培することができるようになってきています。こうした技術の変化も、栽培の選択肢を増やす大きな変化ですね。

K : 植物は生き物ですからね。



H : 河野君(THE SUCCULENTIST®︎)が、オファーし始めたHABITAT(自生地)という世界観と、ステージング(植え込み、仕立て)という楽しみ方も、最近の変化ですよね。日本には、これだけ優れた園芸文化があるのに、これまで、自生地というものにフォーカスが与えられたことは、不思議なことにほとんどなかったです。これまでの日本の楽しみ方にはなかった、新しい文化だと思います。こうやって新しいものの見方、視点、楽しみ方が多様になるというのは、面白いものですね。例えば、植物自体でも、産地データがついてるものを欲しがる人が増えたり、明らかに変化を感じています。

K : 園芸的な楽しみ方には、いろんな側面がありますし、それだけ楽しみ方も多様になってるということですね。

H : 他人との比較じゃない、植物と向き合った楽な楽しみ方っていうものがもっと広がったら嬉しいと思いますね。今回のメインビジュアルには、それが表現されていて、ワクワクするものがありました。



K : 今年で、創業93年。もうすぐ100周年が見えてきます。100周年に向けて、何か考えたりしているのですか。

H : ...どうだろう笑。何か考えたいですね。でも節目にとらわれず、今まで続けてこれた伝統を大事にしながら、より広い人々に多肉植物・サボテンの魅力、新しい楽しみ方を提供していけるようにしていきたいですね。

S : 100周年か、それまでは、元気に生きてないと。

All : 笑



K : 鶴仙園の未来と言えば、これは十夢さんに聞かないといけませんね。

T : 僕は、特にアパレルが好きなので、鶴仙園の歴史だけにとらわれず、新しいことをしていきたいと思っています。今の盛り上がりが始まってからでも、まだ10年弱ですから、これからの7年でどうなるかはまだ分かりません。でも、私自身も多肉植物/サボテンの世界は、本当に奥が深いと感じています。伝統にとらわれず、進んで行けたらと思います。

K : ありがとうございました。

Family : ありがとうざいました。

Interview & Text by Tadayoshi Kono(THE SUCCULENTIST®)
Photo by Shuhei Nomachi (APT INC.)

ABOUT KAKUSEN-EN
昭和5年創業。93年に渡り培ったノウハウを活かして世界各地のサボテン及び多肉植物の多品種を取り揃える。現在は西武池袋本店の9階屋上に常設の「サボテン・多肉植物専門店 鶴仙園西武池袋店」を主軸にサボテンと多肉植物の魅力を伝えるべく、アパレルブランドとの協業や各地で開催される販売会や異業種イベントにも積極的に参加するなど多方面で活動を続けている。
https://www.sabo10.tokyo/
@kakusen_en

ABOUT THE SUCCULENTIST®
河野忠賢(KONO TADAYOSHI)は、幼い頃より多肉植物に傾倒し、その卓越した専門知識で世界中の研究者、愛好家と深い繋がりをもち、国内外で多肉植物・サボテンにまつわる執筆や、企業のアドバイザーをつとめる。自身のブランドであるTHE SUCCULENTIST®︎では、多肉植物に関わる様々なオリジナルプロダクトを展開し、自身がオファーする、多肉植物・サボテンの自生地の風景を取り込んだ植え込み"HABITAT SERIES"は、新たなステージングカルチャーとして、世界的に注目を集めている。著書に「多肉植物-HABITAT STYLE-」、翻訳・監修者として「ナマクアランドの多肉植物」がある。
thesucculentist.com
@tadayoshi_kono


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鶴仙園(かくせんえん)、今や日本でサボテンを育てているならば、知らない人はいないだろう。一般層からコア層まで、幅広く満足させるサボテン・多肉植物の専門店として、一線を画す存在となっている。鶴仙園 西武池袋屋上店は、連日多くの人で賑わい、本店である駒込店は、現在予約制での来店となっている。

昭和5年(1930年)に初代 靍岡銀之助氏によって創業され、以降4代にわたる歴史をもつ。現在は、3代目 秀明氏を代表として、2代目 貞男氏が支え、そして4代目となる十夢氏が業界の新たな可能性を模索している。秀明氏は、日本国内において、多肉植物・サボテンの魅力を伝えるべくさまざまな普及/啓蒙活動にも力を注いでいる。異業種との協業や販売会にも積極的に参加し、多方面で業界のハブ的存在としても活動している。

UNION TOKYO x CACTUS STOREのスペシャルコラボにあたり、PLANTS SUPPORT by KAKUSEN-ENという形でご協力いただいた。会期中は、UNION x CACTUS STOREのテラコッタポットに植え付けた植物の販売が行われる。会期初日の2日間、21(土)、22(日)には、植木鉢単体との植え合わせも楽しめるよう、選び抜かれたプラ鉢苗の販売も行われる。今回、CACTUS STORE AT UNION TOKYOの全体のキュレーションを務め、鶴仙園とも旧知の仲であるTHE SUCCULENTIST®︎の河野忠賢が、そのヒストリーと今後について、インタビューする。





「鶴仙園のルーツ」

河野 忠賢(以下、K): 貞男さん(以下、S)、秀明さん(以下、H)、十夢さん(以下、T)の3代に集まっていただきました。改めて、今日は色々聞かせていただきます。まず、"鶴仙園"という屋号は、靍(鶴)岡による、サボテン("仙"人掌)のナーセリー(園)ということで間違いないですよね。

秀明(以下、H ): そうです。初代は、今の僕の爺様。

貞男(以下、S ): つまり、俺の親父だね、銀之助。

K : 今の3代もキャラクターが、それぞれみんな違っていますが、初代の銀之助さんは、一体どんな人だったのでしょうか。

S : うちの親父は元々紙問屋の息子で、ある時、夜店で売ってたサボテンを買ってきて、そこから始めたって聞いたね。足立区に土地を持っていたから、そこに温室を最初に建てたそうだ。1930年、昭和5年に鶴仙園を創業した。

K : 今日は、昭和11年発行の鶴仙園のカタログを持って来ました。

S : そう!この感じ、古いねえ。今みたいな絵のロゴはなくて、<鶴仙園>の字だった。懐かしいよ。




K : 銀之助さんから貞男さん、秀明さん、そして十夢さんへと、今や4代続くことになっているわけですが、貞男さんは、どうやってこの家業に進んだのでしょう。

S : そうだなあ。まあ、子供の頃から植え替えやら、なんやら手伝わされてて、やりたいこともなかったから、自然と、この道に進んだね。そのころ、日本に大きなサボテンブームがあって、今みたいに百貨店で催事をするのが流行ってた。それで、ある時に池袋で催事があるからって、声をかけられたんだよ。それが、"西天"、西武の屋上だったんだね。その時実は、もう一件サボテン屋が呼ばれてたんだよ。それで負けねえって、いうんで頑張って売ったよね。銀之助も俺も、負けず嫌いだし。でもそのおかげでさ、その後常設で出さないかということになった時、売上げの一番だったうちを選んでくれたんだ。それから、50年近く、今もたくさんのお客さんに足を運んでいただいています。あの時気張ってなかったら、今はないよね。




H : 西武の屋上には、馴染みの方だけではなくて、百貨店を楽しんだ流れでたまたまのお客さんもきて下さるので、とてもありがたい場所です。

K : 今では、西武は、鶴仙園の代名詞ですよね。貞男さんが、今の鶴仙園の基礎を築いたわけですね。2代続きいよいよ家業となったサボテン屋、続く秀明さんは、どのように3代目になったんでしょう。

H : うーん、これが、実は親父と似たような感じです。大学を出て、本格的にこの商売を始めたのは2000年代の初めでしょうか。そのころは、多肉植物・サボテン自体が下火の時代で、それでも、ハオルチアブームのようなものがあって。自分は、ハオルチアでは負けたくない、という気持ちでやっていました。業界の先輩方たちにも支えてもらって、今に至ります。子供の頃から、手伝ったりもしていたし、たまに業者のセリになんかについて行ったら、もう、3代目だって勝手に紹介されてるし笑 そうやっているうちに、大学も卒業して、この家業にフェードインしてった感じですね。親父が腰を悪くしたタイミングも、ありました。




K : 貞男さんは、サボテンブーム、秀明さんはハオルチアブーム、それぞれが業界の浮き沈みを経験してきてましたよね。それでも続けてきた。

S : そうだよ。昔は、カクタスこそ王道。多肉は、"草もの"なんてちょっと下に見られてた。まあ、そんなのは昔の話だ。長くやってれば、浮き沈みはあるよ。

H : 親父と違うものを扱いたいっていう気持ちもありましたよ。

K : 今のロゴは、秀明さんの代に西天が改装になるタイミングで、作られたとお聞きしました。あれは、ハオルチアですよね?

H : あれは、ハオルチアのクーペリー(オブツーサ)を上から見たところをモチーフにしているんです。昔、うちで働いていた若いデザイナーに作ってもらいました。

K : 亀甲竜にも見えますね。"God"(西武池袋屋上店に置かれた、亀甲竜の有名な木)だと思っている人もいるかもしれませんね。

H : そうなんです。よく、そう誤解されるのですが、あれは間違いなくハオルチアです。




K : トムさんも、今や4代目として家業に入られた。そもそも家業が”サボテン屋”って、かなりレアケースだと思うのですが。学校には多分一人もいなかったでしょう笑

T : いないですよ笑

K : トムさんは、大学時代にNEIGHBORHOOD®︎でアルバイトしていたぐらい、アパレルの世界が好きなんですよね。

T : そうです。短い期間でしたけど、ご縁をいただいて。その頃の人たちとは、今でも仲良くさせてもらっています。僕は、実は一度外に出たくて、大学を出てから一度アパレルの会社に就職しました。それから、コロナ禍の中で色々な変化があって、家業を継ぐことに決めました。

H : トムには、ここまできたら、4代目ついで欲しいって気持ちは、正直ありました。

K : 素晴らしいですね。





CACTUS STORE AT UNION TOKYOの開催にあたり、製作されたCS特製のテラコッタポット(植木鉢)は、UNIONフロントマンとCSバタフライロゴを、A/B面に刻印した、ダブルロゴのデザインとなっている。サイズ展開は、4inch、6inch、8inch、10inchの4種類、全部で6型の展開となる。



K : 今回のCACTUS STORE AT UNION TOKYO自体が、象徴的なものですが、多肉植物・サボテンは、狭い業界だけでなく、アパレルの分野にも浸透して、一つのカルチャーとしてより広い層に浸透したと言っても間違いないでしょう。鶴仙園は、その渦中で、さまざまな経験をしてきたと思うのですが、どのような変化を感じてきましたか?

H : 昔は、サボテン業界というのはある程度決まったお得意様がいるだけの狭い世界でした。サボテン屋で、食っていけるの?と言われることもありました。最近は、この商売をやっていて、面白いというかありがたいのは、人の繋がりが増えたことですね。たくさんのポップアップイベントに参加する機会をいただいていますが、そうしたアパレルブランドの方々も、元々はお客様の一人だったことがきっかけということがほとんどなんです。






K : サボテン達が繋いでくれたご縁ということですね。

H : 今回のCACTUS STORE AT UNION TOKYOにもPlants Supportという形でお声かけいただいて、大変楽しみにしていました。メインビジュアルからして、これまでとは違う風が感じられます。世界感まで含めてこれまでの日本で行われたイベントとは別物というか、一線を画した印象があります。日本では、やはり"黒"色の植木鉢が中心でしたし、今もそうです。そこに、今回製作されたのはテラコッタポット。”テラコッタ”っていうとなんか格好良いですけど、つまりは"素焼き鉢"ですよね。素焼き鉢は、日本では古臭い安物の鉢というか、野暮な感じのものだとさえ思われていたものです。それが、一周回って、新しいものに見えてきた気がします。それに、アメリカLAのテラコッタは、色味もいいし、植物も映える。自分達でも、植え込んでいて楽しめました。

K : そうして業界自体に大きな変化があったということですが、長く続けていく上で、変わらないものはありますか。

H : サボテン・多肉植物の専門店としての矜持があります。これは、家業として長く続く中で培われた意識でもあると思います。何よりも、植物を大事に扱うこと。お買い上げいただいた後でも、健康に育つよう、時にはキッパリ、あなたの環境ではそれは作れませんとお伝えします。西武の従業員たちにも、そうした接客に努めるよう口を酸っぱく言っています。健康な植物は、美しいですから。TVや雑誌の媒体に出演して、講師を務める機会もいただいていますが、やはり大事にしているのはそこですね。売っておしまい、の商売では、決してやっていくことはできません。



H : 河野君(THE SUCCULENTIST®︎)が、オファーし始めたHABITAT(自生地)という世界観と、ステージング(植え込み、仕立て)という楽しみ方も、最近の変化ですよね。日本には、これだけ優れた園芸文化があるのに、これまで、自生地というものにフォーカスが与えられたことは、不思議なことにほとんどなかったです。これまでの日本の楽しみ方にはなかった、新しい文化だと思います。こうやって新しいものの見方、視点、楽しみ方が多様になるというのは、面白いものですね。例えば、植物自体でも、産地データがついてるものを欲しがる人が増えたり、明らかに変化を感じています。

K : 園芸的な楽しみ方には、いろんな側面がありますし、それだけ楽しみ方も多様になってるということですね。

H : 他人との比較じゃない、植物と向き合った楽な楽しみ方っていうものがもっと広がったら嬉しいと思いますね。今回のメインビジュアルには、それが表現されていて、ワクワクするものがありました。



K : 今年で、創業93年。もうすぐ100周年が見えてきます。100周年に向けて、何か考えたりしているのですか。

H : ...どうだろう笑。何か考えたいですね。でも節目にとらわれず、今まで続けてこれた伝統を大事にしながら、より広い人々に多肉植物・サボテンの魅力、新しい楽しみ方を提供していけるようにしていきたいですね。

S : 100周年か、それまでは、元気に生きてないと。

All : 笑



K : 鶴仙園の未来と言えば、これは十夢さんに聞かないといけませんね。

T : 僕は、特にアパレルが好きなので、鶴仙園の歴史だけにとらわれず、新しいことをしていきたいと思っています。今の盛り上がりが始まってからでも、まだ10年弱ですから、これからの7年でどうなるかはまだ分かりません。でも、私自身も多肉植物/サボテンの世界は、本当に奥が深いと感じています。伝統にとらわれず、進んで行けたらと思います。

K : ありがとうございました。

Family : ありがとうざいました。



Interview & Text by Tadayoshi Kono(THE SUCCULENTIST®)
Photo by Shuhei Nomachi (APT INC.)



ABOUT KAKUSEN-EN
昭和5年創業。93年に渡り培ったノウハウを活かして世界各地のサボテン及び多肉植物の多品種を取り揃える。現在は西武池袋本店の9階屋上に常設の「サボテン・多肉植物専門店 鶴仙園西武池袋店」を主軸にサボテンと多肉植物の魅力を伝えるべく、アパレルブランドとの協業や各地で開催される販売会や異業種イベントにも積極的に参加するなど多方面で活動を続けている。
https://www.sabo10.tokyo/
@kakusen_en



ABOUT THE SUCCULENTIST®
河野忠賢(KONO TADAYOSHI)は、幼い頃より多肉植物に傾倒し、その卓越した専門知識で世界中の研究者、愛好家と深い繋がりをもち、国内外で多肉植物・サボテンにまつわる執筆や、企業のアドバイザーをつとめる。自身のブランドであるTHE SUCCULENTIST®︎では、多肉植物に関わる様々なオリジナルプロダクトを展開し、自身がオファーする、多肉植物・サボテンの自生地の風景を取り込んだ植え込み"HABITAT SERIES"は、新たなステージングカルチャーとして、世界的に注目を集めている。著書に「多肉植物-HABITAT STYLE-」、翻訳・監修者として「ナマクアランドの多肉植物」がある。
thesucculentist.com
@tadayoshi_kono


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