現在はLAを拠点に多肉植物とサボテンの愛好家の間でカルト的な人気を集め、HOT CACTUS の愛称で親しまれている CACTUS STORE(カクタスストア) 。前回に引き続き、CACTUS STOREと親交の深いTHE SUCCULENTIST®︎の河野忠賢 氏をキュレーション/インスタレーションに迎え、CACTUS STORE とも交友のある国内随一の園芸家でありブロメリアやチランジア、ケープバルブのエキスパートである SPECIES NURSERY(スピーシーズナーサリー)藤川史雄氏がサポートするトランクショーが 10月26日(土)よりUNION OSAKA にて開催。世界中の研究家、愛好家たちとの繋がりを持ち、卓越した専門知識で多肉植物の世界を牽引する THE SUCCULENTIST®(ザ サキュレンティスト)として知られる河野忠賢氏のキュレーションにより手掛けられた、CACTUS STORによるアパレルコレクションの販売、また希少で多種多様な植物のラインナップとLAの工房で手掛けられた特注のPOTS(テラコッタ鉢)が一堂に会する。今はなきCACTUS STOREのNY店にインスピレーションを受け、マンハッタンの居住スペースさながらの空間演出を行い、プランツカルチャーの現在地をリアル伝えるスペシャルイベントに。
UNION OSAKA
住所 : UNION OSAKA 大阪府大阪市西区南堀江 1-16-23-1F
電話番号 : 06-6599-8240
日時:2024年10月26日 - 11月4日
2023年10月、神宮前にあるUNION TOKYOで一つのショウが開かれた。カリフォルニアに拠点をおく、CACTUS STOREとUNIONのコラボレーションショウである。多肉植物(サボテン)というモチーフと、アパレルの交流は、大変に好評をはくした。マニアから、これまでカクタスという植物に縁のなかった初見の人々まで、幅広い層の多くの人を惹きつけ、記憶に残るショウとなったようである。今回約一年の時を経て、待望の第二弾が、UNION OSAKAで行われる。
第一回に引き続き、ディレクション、会場インスタレーションを、THE SUCCULENTIST®︎の河野 忠賢がつとめた。また今回のplants supportメンバーとして、ブロメリアやチランジア、ケープバルブを中心に取り扱うSPECIES NURSERY(スピーシーズナーセリー)の藤川史雄さんをお呼びする。
今年もまた、LAそしてNYを訪れたTHE SUCCULENTIST®︎の河野忠賢が、今回のショウが実現するまでの背景を、CACTUS STORE LA、そしてNYストアのメンバーたちとのダイアローグを記していく。
巨大なボンバックスのなくなった、カクタスストアの入口。
今年もまた、カリフォルニア エコーパークにあるCACTUS STOREのスタジオを訪れている。CSのスタジオの見慣れたガレージを開いてカルロスが現れた。挨拶を交わしていると、あることに気づいて驚いた。
Kono(以下、K) あれ!あの巨大なボンバックスは、どうしたんですか?
Carlos(以下、C) 売れたんです。どんなものも、いずれは旅立つものです。なくなってしまうと寂しいですね。
どんな人があの、高さ数メートルもある巨大な植物を買ったのだろうか。さすがはアメリカだなと思いながら、カルロスを追いかけて、奥のスタジオへと進んでいく。扉を開くと、見知った顔ぶれがデスクを並べている。クリスチャン、マックス、身重のソフィアも、床に製作中のタイルを広げて、プロジェクトを進めている。
クリスチャン(左)マックス(右)
K:アルゼンチンでは、ブロスフェルディアと、テフロカクタス ゲオメトリクスを撮影してきました。それから、チリではコピアポア、これはいうまでもないでしょう。
撮影の仕事でチリから帰ってきたところだと話すと、クリスチャンは、興奮気味に早口に話し始める。
Christian:"Copiapoa, It's really, really somthing. Really something....(コピアポア、あれは本当にすごい、すごい植物だ....)"
クリスチャンのスマホ写真フォルダから。Copiapoa cinereaの自生地。
お互いに、自身の携帯フォルダを見せ合い、ひとしきりの感動を共有した。その後ろではマックスが、昇降式のデスクに、ルームランナーをセットして(椅子は捨てた)、歩きながら淡々とパソコン仕事をしている。
K:さて、カルロス。こうしてまた会えて嬉しいです。前回の東京でのショウを経験して、今度は大阪の店舗での開催が決定しました。
C:今回の第二弾の提案を受けた時は、とても嬉しく、新しく何ができるのだろうかと興奮しました。前回には、消化できなかったアイデアもいくつかあります。
K:例えば?
C:そうですね、UNIONの象徴的なロゴであるフロントマンと、我々のバタフライ(蝶々)ロゴを組み合わせたコラボレーションロゴをとても気に入っていました。そのロゴをデザインに取り入れたアパレルを作っていなかったことに気づいたんです。
K:それで今回、CDPのAdenium socotranumのフーディーと長袖teeを作りましたね。フロントの胸部分に、コラボレーションロゴを配置し、ショウのタイトルも冠したデザインになりました。
C:例によって、Woody氏によるオリジナル版とは、シャツボディの色と、植物体のプリントカラーを変更した特別仕様になっています。また、これまでにもCDPのリプリントは、何シリーズも製作していますが、全てtシャツへのプリントで、フーディーへのプリントは、初めてです。今回実現した、特別なアイテムです。
K:温かみのあるベージュボディで、背中に大きくアデニウムのプリントを背負うデザイン。これからの秋冬には、欠かせないものですね。同様にソコトラヌムのデザインで、半袖は、オーソドックスな白ボディに加え、黒ボディも作りました。合わせて4型の展開です。
*CDP: CACTUS DATA PLANTSは、アメリカ、サボテン界のレジェンドWoody氏によるナーセリー。長年、独自のtシャツをデザインしてきた。
*Adenium socotranum; イエメンに浮かぶ孤島ソコトラ島にだけ生息する巨大な多肉植物。見事なコーデックスを形成する、多肉植物のギークたちの憧れの存在。
K:また、前回のショウで、真っ先に即完売したのがキャップでした。それを踏まえて、今回は、2型の展開となりました。
C:一つは、前回人気だったオイル引きのボディに、チタノプシスをデザインしました。
K:南アフリカに生息するメセンの仲間、開花中というのが嬉しいですね。今回初発表の、可愛らしいデザインです。それから、もう一つが、NON-HUMAN RIGHTSのメッセージを掲げたキャップですね。これは、以前ホワイトボディだったものをアレンジして、特別にブラックボディで製作しました。"NON-HUMAN RIGHTS"とは、どういったメッセージなのでしょうか。
C:カクタスストアは、これまでにも数多くのメッセージをtシャツという形で発信してきました。我々は、その名の通り、”カクタス=サボテン"という世界のギークです。しかし、近年では、その枠を超えて、その他の植物種や、海生生物、環境..広くいえば自然そのものにモチーフを広げています。人間以外の生物や環境、広く言えば地球が持つ権利に焦点をあてたアパレルシリーズの製作が増えています。
K:人と自然、Non-Humanの権利に声を傾けようという姿勢が興味深いですね。自然へのより深い理解が見てとれます。"NON-HUMAN RIGHTS"は、まさにそうした姿勢を象徴するスローガンということですね。
C:我々は、いつも自然から何かを学んでいます。砂漠に生きるサボテンたちの姿に自身の生き様を投影し、自身のあり方を見つめ直したり、かくありたいと願う。自然というものを通じて、さまざまな気づきや学びがあるでしょう。自然は、優れた教師なのです。
K:それから、Gordonの愉快なデザインを黒ボディに変更した特別版を製作しました。
C:サボテン狂の権化、カクタスの世界の重要人物であるゴードン氏による、奇妙なデザインです。黒ボディがクールな雰囲気です。
K:この一年の間、カルロスとは日本でもよく会う機会があったので、今日会っているのも久しぶり、という感じはしませんね。
C:日本を訪れる度に、隙間時間を見つけては、会っていましたからね。去年から動いていた熱海での私邸造園プロジェクトも、無事実現しました。このプロジェクトでは、河野さんにご協力いただいて、さまざまなナーセリーの方をご紹介いただきました。おかげさまでメインの花壇に使う植栽が、非常に豊かなものとなりました。
K:スピーシーズナーセリーの藤川さんのところでは、車いっぱいになるまで買い付けましたよね。時間の経過とともに、移りゆく庭園の景色もまた楽しみです。藤川さんといえば、今回、ご縁あってPlants Supportとして、ご参加いただくことになりました。
C:Mr. Fujikawa! 今回、またご一緒できてとても嬉しいです。例の空き缶と美しい手書きのラベルが忘れられません。
K:藤川さんと言えば、チランジア(エアプランツ)のエキスパートとして有名です。今回、せっかくのご縁、植物の販売で藤川さんにご参加、ご協力いただくということで、エアプランツをモチーフにしたtシャツを特別にデザインしましたよね。
C:植物というと、地面に根をおろして生きているというのが当たり前、多くの方はそういうイメージを保たれているでしょう。しかし、実際には、背の高い木の肌に、くっつくように生きているランや、アナナス、水没するかしないかのギリギリで生きているアマゾンの森林性サボテン。そしてもちろん、電線や、枝先にくっついて生きるチランジアは、代表的な着生植物として挙げられるでしょう。そうした、Extra-Terrstrial(=地上を離れた)な植物を集めた、TAXA(分類群)シリーズを特別にデザインしました。ボディカラーも、空を思いこさせる、2色での展開です。
昨年のUNION TOKYOでのインスタレーションは、カリフォルニアのカクタスカルチャーを踏襲したものだった。テーマは、"Real Grower is here."真の成熟した愛好家の温室にお邪魔するような、リアルなカルチャーを体現したものとなった。店内に建てられた温室は、長年に渡り収集され、使い込まれたプロップ類で溢れかえっていた。壁にはカクタスストアのスタジオのように、いくつものフライヤー、資料が貼られていて、その一つ一つに、紐づいたストーリーが展開されていて、その世界観に存分に浸れるものだった。
そして、今回のUNION OSAKAにおけるインスタレーションのテーマは、東海岸、ニューヨークのカクタスシーンにインスピレーションを得てデザインされた。ところで、実はNYにもカクタスストアがオープンしていたことをご存じだろうか。
かつてのNYストア。ビルとビルの間、竹に囲まれるようにしてストアが存在した。
無機質なビルとビルの隙間にある更地に、竹が植えられ、それ自体が建築物のように伸びて、そびえている。コンクリートジャングルの間に存在するNon-humanな建築物、それだけで何かCSの哲学を感じられる気がする。その両脇の竹林の間に、簡易な温室が夏限定で現れるのだ。夏も冬も、年中屋外で、ほとんどあらゆる種類の多肉植物/サボテンが育てられるカリフォルニアと違い、ニューヨークは、厳しい冬の寒さがある。そのため、夏の間にだけ、シーズナルに現れるスタイルをとっている。
ロウアーマンハッタン、チャイナタウン。溢れんばかりに盛られたパストラミサンドで有名なKatz's Delicatessenや、Spicy villageの極上のダンプリング、スライスピザの楽しめるScarr's Pizzaなど、近くには有名なフードスポットも数多い。先鋭なセレクトショップや数多くのファッションブランドが軒を連ね、数多くの若者が集まる地域だ。ピザをかじっていれば、背中を叩いて声をかけてくる友人で溢れている。そうした瞬間に、彼らの生き生きとしたローカルコミュニティを感じるのだった。
有名なフードストアも多い。夜のカッツ・デリカテッセンには、長蛇の列ができていた。
John:「今声をかけてきたのは、学生時代の友人です。このエリアにくれば、こうして自然と会えます。NYストアもまさに、そういう場所の一つでした。なくなってしまったのは、本当に残念に思っています。NYは、珍しい植物の手に入る場所や機会がないので、カリフォルニアで仕入れた植物を、ニューヨークで販売したりということをよくしていました。時には、トラックを運転して、カリフォルニアで買い付けたたくさんの植物を、NYまでそのまま持ち帰ったこともあります。」
そう話してくれたのは、NYストアの中心メンバーであるジョン。彼は、祖父母から受け継いだマンハッタン、グリニッジヴィレッジのマンションの一室にすんでいる。ブルックリン、ダンボに居を構えるザック、そしてCSのグラフィックデザインを担い自身もミュージシャン(wet)として活動するジョーの3人でNYストアを運営していた。
NYストアは、残念ながら今はもうない。昨年に、土地のオーナーが代わり、これまでの運営を維持できなくなってしまった。
J:「以前の土地のオーナーは、そうしたコミュニティの繋がりに理解があり、NYストアには、毎年数多くの人々が集まっていました。空き地はまだありますが、すでに温室はなく、竹だけが残っています。」
現在のNYストア。すでに温室はなく、竹だけが残されている。
今のところ、具体的なプランはないそうだが、新しい場所で、NYストアの再会を期待したい。今回、10日間ほどのNY滞在中は、ジョンの部屋を借りて寝泊まりしていた。文京地区とも言える閑静なヴィレッジの、祖父母から相続した部屋は、とても居心地が良く、リビングの壁には額に入れられたさまざまなアート、手作りの棚に小ぶりな鉢に植えられた植物が置かれていた。そこに決定的にLAとは違う何か、を感じた。壁にかかっているコラージュや、油絵は、祖父によるものだそうで、自身の楽しみ、余暇として製作していたのだという。置かれている家具も、決してモダンなものではない。グランマ(祖母)から引き継いだ、古風なキャビネット。ベッドサイドに置かれたそれは、服や下着が収められていたのだろう。しかし、そのキャビネットの扉を開けると、人工照明がつけられ、小さな実生苗がたくさん育てられていた。また、別の引き出しには、交配のため(種子とり)さまざまな筆やピンセット、使い込まれた道具が収められていた。卓上には、当然のように、多肉植物のバイブルの一つであるEUPHORBIA JOURNALが置かれ、彼が生粋の多肉植物好きであることが納得できた。NYという気候、NYという街で暮らす彼のリアル。NYのリアルなカクタスカルチャーが、そこにはあった。
ジョンのリビングルームの一角。
どこかの誰かの、多肉植物を愛する人間の暮らすリビングルーム。それが今回のインスタレーションのテーマである。今回のショウでは、NYとOsakaが繋がる、そんな空間をお楽しみいただきたい。
Text and Photos by THE SUCCULENTIST®︎ Kono Tadayoshi
現在はLAを拠点に多肉植物とサボテンの愛好家の間でカルト的な人気を集め、HOT CACTUS の愛称で親しまれている CACTUS STORE(カクタスストア) 。前回に引き続き、CACTUS STOREと親交の深いTHE SUCCULENTIST®︎の河野忠賢 氏をキュレーション/インスタレーションに迎え、CACTUS STORE とも交友のある国内随一の園芸家でありブロメリアやチランジア、ケープバルブのエキスパートである SPECIES NURSERY(スピーシーズナーサリー)藤川史雄氏がサポートするトランクショーが 10月26日(土)よりUNION OSAKA にて開催。世界中の研究家、愛好家たちとの繋がりを持ち、卓越した専門知識で多肉植物の世界を牽引する THE SUCCULENTIST®(ザ サキュレンティスト)として知られる河野忠賢氏のキュレーションにより手掛けられた、CACTUS STORによるアパレルコレクションの販売、また希少で多種多様な植物のラインナップとLAの工房で手掛けられた特注のPOTS(テラコッタ鉢)が一堂に会する。今はなきCACTUS STOREのNY店にインスピレーションを受け、マンハッタンの居住スペースさながらの空間演出を行い、プランツカルチャーの現在地をリアル伝えるスペシャルイベントに。
UNION OSAKA
住所 : UNION OSAKA 大阪府大阪市西区南堀江 1-16-23-1F
電話番号 : 06-6599-8240
日時:2024年10月26日 - 11月4日
2023年10月、神宮前にあるUNION TOKYOで一つのショウが開かれた。カリフォルニアに拠点をおく、CACTUS STOREとUNIONのコラボレーションショウである。多肉植物(サボテン)というモチーフと、アパレルの交流は、大変に好評をはくした。マニアから、これまでカクタスという植物に縁のなかった初見の人々まで、幅広い層の多くの人を惹きつけ、記憶に残るショウとなったようである。今回約一年の時を経て、待望の第二弾が、UNION OSAKAで行われる。
第一回に引き続き、ディレクション、会場インスタレーションを、THE SUCCULENTIST®︎の河野 忠賢がつとめた。また今回のplants supportメンバーとして、ブロメリアやチランジア、ケープバルブを中心に取り扱うSPECIES NURSERY(スピーシーズナーセリー)の藤川史雄さんをお呼びする。
今年もまた、LAそしてNYを訪れたTHE SUCCULENTIST®︎の河野忠賢が、今回のショウが実現するまでの背景を、CACTUS STORE LA、そしてNYストアのメンバーたちとのダイアローグを記していく。
巨大なボンバックスのなくなった、カクタスストアの入口。
今年もまた、カリフォルニア エコーパークにあるCACTUS STOREのスタジオを訪れている。CSのスタジオの見慣れたガレージを開いてカルロスが現れた。挨拶を交わしていると、あることに気づいて驚いた。
Kono(以下、K) あれ!あの巨大なボンバックスは、どうしたんですか?
Carlos(以下、C) 売れたんです。どんなものも、いずれは旅立つものです。なくなってしまうと寂しいですね。
どんな人があの、高さ数メートルもある巨大な植物を買ったのだろうか。さすがはアメリカだなと思いながら、カルロスを追いかけて、奥のスタジオへと進んでいく。扉を開くと、見知った顔ぶれがデスクを並べている。クリスチャン、マックス、身重のソフィアも、床に製作中のタイルを広げて、プロジェクトを進めている。
クリスチャン(左)マックス(右)
K:アルゼンチンでは、ブロスフェルディアと、テフロカクタス ゲオメトリクスを撮影してきました。それから、チリではコピアポア、これはいうまでもないでしょう。
撮影の仕事でチリから帰ってきたところだと話すと、クリスチャンは、興奮気味に早口に話し始める。
Christian:"Copiapoa, It's really, really somthing. Really something....(コピアポア、あれは本当にすごい、すごい植物だ....)"
クリスチャンのスマホ写真フォルダから。Copiapoa cinereaの自生地。
お互いに、自身の携帯フォルダを見せ合い、ひとしきりの感動を共有した。その後ろではマックスが、昇降式のデスクに、ルームランナーをセットして(椅子は捨てた)、歩きながら淡々とパソコン仕事をしている。
K:さて、カルロス。こうしてまた会えて嬉しいです。前回の東京でのショウを経験して、今度は大阪の店舗での開催が決定しました。
C:今回の第二弾の提案を受けた時は、とても嬉しく、新しく何ができるのだろうかと興奮しました。前回には、消化できなかったアイデアもいくつかあります。
K:例えば?
C:そうですね、UNIONの象徴的なロゴであるフロントマンと、我々のバタフライ(蝶々)ロゴを組み合わせたコラボレーションロゴをとても気に入っていました。そのロゴをデザインに取り入れたアパレルを作っていなかったことに気づいたんです。
K:それで今回、CDPのAdenium socotranumのフーディーと長袖teeを作りましたね。フロントの胸部分に、コラボレーションロゴを配置し、ショウのタイトルも冠したデザインになりました。
C:例によって、Woody氏によるオリジナル版とは、シャツボディの色と、植物体のプリントカラーを変更した特別仕様になっています。また、これまでにもCDPのリプリントは、何シリーズも製作していますが、全てtシャツへのプリントで、フーディーへのプリントは、初めてです。今回実現した、特別なアイテムです。
K:温かみのあるベージュボディで、背中に大きくアデニウムのプリントを背負うデザイン。これからの秋冬には、欠かせないものですね。同様にソコトラヌムのデザインで、半袖は、オーソドックスな白ボディに加え、黒ボディも作りました。合わせて4型の展開です。
*CDP: CACTUS DATA PLANTSは、アメリカ、サボテン界のレジェンドWoody氏によるナーセリー。長年、独自のtシャツをデザインしてきた。
*Adenium socotranum; イエメンに浮かぶ孤島ソコトラ島にだけ生息する巨大な多肉植物。見事なコーデックスを形成する、多肉植物のギークたちの憧れの存在。
K:また、前回のショウで、真っ先に即完売したのがキャップでした。それを踏まえて、今回は、2型の展開となりました。
C:一つは、前回人気だったオイル引きのボディに、チタノプシスをデザインしました。
K:南アフリカに生息するメセンの仲間、開花中というのが嬉しいですね。今回初発表の、可愛らしいデザインです。それから、もう一つが、NON-HUMAN RIGHTSのメッセージを掲げたキャップですね。これは、以前ホワイトボディだったものをアレンジして、特別にブラックボディで製作しました。"NON-HUMAN RIGHTS"とは、どういったメッセージなのでしょうか。
C:カクタスストアは、これまでにも数多くのメッセージをtシャツという形で発信してきました。我々は、その名の通り、”カクタス=サボテン"という世界のギークです。しかし、近年では、その枠を超えて、その他の植物種や、海生生物、環境..広くいえば自然そのものにモチーフを広げています。人間以外の生物や環境、広く言えば地球が持つ権利に焦点をあてたアパレルシリーズの製作が増えています。
K:人と自然、Non-Humanの権利に声を傾けようという姿勢が興味深いですね。自然へのより深い理解が見てとれます。"NON-HUMAN RIGHTS"は、まさにそうした姿勢を象徴するスローガンということですね。
C:我々は、いつも自然から何かを学んでいます。砂漠に生きるサボテンたちの姿に自身の生き様を投影し、自身のあり方を見つめ直したり、かくありたいと願う。自然というものを通じて、さまざまな気づきや学びがあるでしょう。自然は、優れた教師なのです。
K:それから、Gordonの愉快なデザインを黒ボディに変更した特別版を製作しました。
C:サボテン狂の権化、カクタスの世界の重要人物であるゴードン氏による、奇妙なデザインです。黒ボディがクールな雰囲気です。
K:この一年の間、カルロスとは日本でもよく会う機会があったので、今日会っているのも久しぶり、という感じはしませんね。
C:日本を訪れる度に、隙間時間を見つけては、会っていましたからね。去年から動いていた熱海での私邸造園プロジェクトも、無事実現しました。このプロジェクトでは、河野さんにご協力いただいて、さまざまなナーセリーの方をご紹介いただきました。おかげさまでメインの花壇に使う植栽が、非常に豊かなものとなりました。
K:スピーシーズナーセリーの藤川さんのところでは、車いっぱいになるまで買い付けましたよね。時間の経過とともに、移りゆく庭園の景色もまた楽しみです。藤川さんといえば、今回、ご縁あってPlants Supportとして、ご参加いただくことになりました。
C:Mr. Fujikawa! 今回、またご一緒できてとても嬉しいです。例の空き缶と美しい手書きのラベルが忘れられません。
K:藤川さんと言えば、チランジア(エアプランツ)のエキスパートとして有名です。今回、せっかくのご縁、植物の販売で藤川さんにご参加、ご協力いただくということで、エアプランツをモチーフにしたtシャツを特別にデザインしましたよね。
C:植物というと、地面に根をおろして生きているというのが当たり前、多くの方はそういうイメージを保たれているでしょう。しかし、実際には、背の高い木の肌に、くっつくように生きているランや、アナナス、水没するかしないかのギリギリで生きているアマゾンの森林性サボテン。そしてもちろん、電線や、枝先にくっついて生きるチランジアは、代表的な着生植物として挙げられるでしょう。そうした、Extra-Terrstrial(=地上を離れた)な植物を集めた、TAXA(分類群)シリーズを特別にデザインしました。ボディカラーも、空を思いこさせる、2色での展開です。
昨年のUNION TOKYOでのインスタレーションは、カリフォルニアのカクタスカルチャーを踏襲したものだった。テーマは、"Real Grower is here."真の成熟した愛好家の温室にお邪魔するような、リアルなカルチャーを体現したものとなった。店内に建てられた温室は、長年に渡り収集され、使い込まれたプロップ類で溢れかえっていた。壁にはカクタスストアのスタジオのように、いくつものフライヤー、資料が貼られていて、その一つ一つに、紐づいたストーリーが展開されていて、その世界観に存分に浸れるものだった。
そして、今回のUNION OSAKAにおけるインスタレーションのテーマは、東海岸、ニューヨークのカクタスシーンにインスピレーションを得てデザインされた。ところで、実はNYにもカクタスストアがオープンしていたことをご存じだろうか。
かつてのNYストア。ビルとビルの間、竹に囲まれるようにしてストアが存在した。
無機質なビルとビルの隙間にある更地に、竹が植えられ、それ自体が建築物のように伸びて、そびえている。コンクリートジャングルの間に存在するNon-humanな建築物、それだけで何かCSの哲学を感じられる気がする。その両脇の竹林の間に、簡易な温室が夏限定で現れるのだ。夏も冬も、年中屋外で、ほとんどあらゆる種類の多肉植物/サボテンが育てられるカリフォルニアと違い、ニューヨークは、厳しい冬の寒さがある。そのため、夏の間にだけ、シーズナルに現れるスタイルをとっている。
ロウアーマンハッタン、チャイナタウン。溢れんばかりに盛られたパストラミサンドで有名なKatz's Delicatessenや、Spicy villageの極上のダンプリング、スライスピザの楽しめるScarr's Pizzaなど、近くには有名なフードスポットも数多い。先鋭なセレクトショップや数多くのファッションブランドが軒を連ね、数多くの若者が集まる地域だ。ピザをかじっていれば、背中を叩いて声をかけてくる友人で溢れている。そうした瞬間に、彼らの生き生きとしたローカルコミュニティを感じるのだった。
有名なフードストアも多い。夜のカッツ・デリカテッセンには、長蛇の列ができていた。
John:「今声をかけてきたのは、学生時代の友人です。このエリアにくれば、こうして自然と会えます。NYストアもまさに、そういう場所の一つでした。なくなってしまったのは、本当に残念に思っています。NYは、珍しい植物の手に入る場所や機会がないので、カリフォルニアで仕入れた植物を、ニューヨークで販売したりということをよくしていました。時には、トラックを運転して、カリフォルニアで買い付けたたくさんの植物を、NYまでそのまま持ち帰ったこともあります。」
そう話してくれたのは、NYストアの中心メンバーであるジョン。彼は、祖父母から受け継いだマンハッタン、グリニッジヴィレッジのマンションの一室にすんでいる。ブルックリン、ダンボに居を構えるザック、そしてCSのグラフィックデザインを担い自身もミュージシャン(wet)として活動するジョーの3人でNYストアを運営していた。
NYストアは、残念ながら今はもうない。昨年に、土地のオーナーが代わり、これまでの運営を維持できなくなってしまった。
J:「以前の土地のオーナーは、そうしたコミュニティの繋がりに理解があり、NYストアには、毎年数多くの人々が集まっていました。空き地はまだありますが、すでに温室はなく、竹だけが残っています。」
現在のNYストア。すでに温室はなく、竹だけが残されている。
今のところ、具体的なプランはないそうだが、新しい場所で、NYストアの再会を期待したい。今回、10日間ほどのNY滞在中は、ジョンの部屋を借りて寝泊まりしていた。文京地区とも言える閑静なヴィレッジの、祖父母から相続した部屋は、とても居心地が良く、リビングの壁には額に入れられたさまざまなアート、手作りの棚に小ぶりな鉢に植えられた植物が置かれていた。そこに決定的にLAとは違う何か、を感じた。壁にかかっているコラージュや、油絵は、祖父によるものだそうで、自身の楽しみ、余暇として製作していたのだという。置かれている家具も、決してモダンなものではない。グランマ(祖母)から引き継いだ、古風なキャビネット。ベッドサイドに置かれたそれは、服や下着が収められていたのだろう。しかし、そのキャビネットの扉を開けると、人工照明がつけられ、小さな実生苗がたくさん育てられていた。また、別の引き出しには、交配のため(種子とり)さまざまな筆やピンセット、使い込まれた道具が収められていた。卓上には、当然のように、多肉植物のバイブルの一つであるEUPHORBIA JOURNALが置かれ、彼が生粋の多肉植物好きであることが納得できた。NYという気候、NYという街で暮らす彼のリアル。NYのリアルなカクタスカルチャーが、そこにはあった。
ジョンのリビングルームの一角。
どこかの誰かの、多肉植物を愛する人間の暮らすリビングルーム。それが今回のインスタレーションのテーマである。今回のショウでは、NYとOsakaが繋がる、そんな空間をお楽しみいただきたい。
Text and Photos by THE SUCCULENTIST®︎ Kono Tadayoshi